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「いなか家」・「愛媛グルメ紀行」 440

今日は県道伊予川内線沿いの、松山市中野町にある小さな小さなお蕎麦屋さん”いなか家”さんをご紹介します。


同じ県道沿いにある”うどんの里 耕庵”さんより松山寄りです。


県道伊予川内線は、国道56号線と33号線更には国道11号線を繋ぐ重要な県道で、別名”トラック街道”と呼ばれ、大型トラックが昼夜を問わず疾走する道路です。


飲食店の中には広い駐車場を用意し、昼時には大型トラックが勢ぞろいしているお店もありますが、このお店の駐車場に大型トラックは入れません。

看板1
この、小さな看板が目印です。


ですが、極めて目立たない。よほど目を凝らして車を走らせていないと見過ごしてしまいます。


それにこの看板では、”手打ちそば”の文字が小さく書かれてはいますが、このお店がどういうお店であるか分かりにくい。

玄関2
この玄関の、暖簾に”そば”と染め抜かれている。


このお店の駐車場に、複数の車がとまっている事は珍しい。


これで、お客さんをどう拾うのか?ちょっと謎めいたお店だった。

薪ストーブ3
店内に入ると、玄関のすぐ先には大きな”火鉢”が置かれ、炭には火が入っている。


更に、お店の中央には画像の”薪ストーブ”が据えられ、ストーブの中には大きめの薪がくべられて暖かい炎が上がってる。


松山市内で”薪ストーブ”とは????と思ったが、その理由は後ほど判明します。

メニュー4
メニューは?っと店内を見渡しても、それらしいものは何ひとつ見当たらない。

ワタシよりやや年上かな?とお見受けしたおばちゃんが暖かいほうじ茶を持ってこられた。

店内には、これも年配の女性客が一人静かに”掛けそば”を啜っていた。

「メニューはありませんか?」と尋ねてみた。

すると、「蕎麦とうどんしかありません」と言いながら、上の伝票を示された。

なるほど、基本はそばとうどんだけ。それをざるでいただくか、このお店で表示されている”煮込み”でいただくか。つまり冷たいのか暖かいのかの2種類だけ。

後は、それに御飯を加えるかどうかだけという超シンプルなメニュー。

「”ざるそば”を大盛りで」と、ワタシが注文すると、おばちゃんいささか驚いたように「え?ざる・・・・・ですか・・・・・」と。

蕎麦セット5
そのまま黙って厨房に帰られ、しばらく出てこられなかった。

どうやら、このお店はおばちゃん一人でやっているようだった。

先客の女性客が勘定を払ってお店を出た。

そして、おばちゃんがもってこられたのがこの画像。

何と!大盛りに盛られた”田舎蕎麦”と、脇には”煮物”と手作りと一目で分かる”漬物”まで付いていた。

煮つけ6漬物7
”煮物”だって、里芋やこんにゃく、大根などを丁寧に煮込んである。これも明らかに手作り。


”漬物”だって、11月30日の”愛媛グルメ紀行”428号でアップした”浜のごっつぉう 魚たけ”で出された、ビニールパックから菜箸でつまんで皿に盛った風の”漬物”では決してない。


おばちゃん一人がコツコツと仕込みをし、お客さんが来てくれたら食べてもらおうと心を込められて盛られている。

蕎麦8
これが、このお店で呼んでいる”そば”。色合いからすれば”田舎蕎麦”。


ところが、これが文字通りの”田舎蕎麦”であることが分かったのはもう少し後のこと。


ワタシがこの蕎麦と対面している頃に、老夫婦が入ってきてうどんを注文した。


その注文をこなして、おばちゃんが一段落したところで話しかけた。

アップ9
「このお店は何時始められたのですか?」

「やっと3年がきます」

「なぜお蕎麦を?」

「いやー、遊んどるよりはいいと思って」

「御自分で蕎麦を打たれているんですか?」

「はい、蕎麦だけは自分で打って、うどんは業者から仕入れたものを・・・」

「蕎麦は二八で打たれている?」

え???お客さん、あのーーーー、そば・・・の人?」と、おばちゃんに困惑の表情が浮かんだ。

「二八より、もう少し”つなぎ”が入っているかも・・・・。つなぎ入れんと、上手くそばがまとまらんので・・・」っと、おばちゃん至って正直。

「じゃあ、蕎麦打ちは誰かに教わって蕎麦屋を始められた?」と、ワタシ。

「私は田舎から出てきたんよ。田舎では、どの家でもそばを自宅で打って食べとったケン・・・・」

「田舎って?」

「上浮穴の・・・・・そう、その一番奥の”柳谷”から出てきて・・・」

「柳谷なら蕎麦を畑で作っていたんでしょう」っとワタシ。

「え?お客さん、柳谷なんて、知っとるん???」と不思議そうな目で。

知っとるよーーー、柳谷を越えて山に上がると”大野ヶ原”があるでしょう。ワタシは大野ヶ原よりは下やけど、その大野ヶ原がある野村が出身ヤケン!」

すると、おばちゃんの顔に笑顔が花咲いた。

麺10
蕎麦は、太い部分あり細い部分あり。懸命に、でもぎこちなく包丁で切ったことが分かる。

そのことをおばちゃんに伝えると、「何べんやっても、上手く切れんのよー、包丁が悪いんかも知れん」と。

「蕎麦の太さが不ぞろいでもいいんですよ。蕎麦の美味しさには変わりはない」とワタシが言うともばちゃんに再び笑顔が。

「蕎麦湯は出しとられるんですか?」とワタシが尋ねると、「蕎麦湯は出しとらんのよ」とおばちゃん。

これで全ての疑問が一気に解けた。

薪ストーブ”は、柳谷では当たり前。火鉢だって、今でも現役で活躍しているのかも知れない。

蕎麦を打てるのが、柳谷の主婦の条件。そして、どの家でもそばを”ざる”では食べない。みな温かいそばで食べる。だから、蕎麦湯をとる習慣がない。

田舎蕎麦”は、粉の挽き方も然ることながら、文字通り”柳谷”の田舎のそばという意味。

子供の頃おじいちゃんの家に行くと、おばあちゃんが自分で打った”うどん”を出してくれた。これがすこぶる美味しかった。

野福峠
その”手打ちうどん”食べたさに、小学校4年生の夏休み、西予市の明浜町狩江という村から、子供用の小さい小さい自転車で野福峠を押して越え、宇和町を通って野村まで一人で帰ったことを思いました。28キロ余りある、高低差も大きい。

上の画像は小学4年生の時に、半ズボンとランニングシャツ、それにゴムサンダルで子供用自転車を押して超えた”野福峠”。立ちはだかる巨大な壁だった、子供には。

両親が、ワタシが行方不明になったと警察に連絡。警察はワタシが野村に向かったと見て、要所要所で検問体制を敷いた。

とこが、ワタシはどうやら検問を敷く前、前にそこを通過したことを知ったのは後の話。警察は小学4年生が子供用自転車で、と判断し手配が後手に廻った。

今考えると、その当時から”美味しいものには目がなかった”ようです。そのおばあちゃんの打った”うどん”を思い起こさせてもらった。

「本当に懐かしい味を頂きました。ご馳走さまでした」と言ってお店を後にした。

「お客さん、この辺にまた来ることがあったら寄ってや!」というおばちゃんの声に、笑顔でうなずいた。



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おはようございます♪

このお店は何度か通って気になってましたが、本当に沢山の車が止まってた、
と言う事は無いですね(^^ゞ
何時もこの店を通り越して、高成へ行く事が多いですね。
ベル家に蕎麦を食べるという習慣がないからでしょうね(笑)

最近主人が、時々そばを茹でて食べるようになりました。
今度こちら方面へ行く事があったら寄ってみようかしら(^^ゞ
高成は2時までだから、時々閉まってる事が有って、腹ペコで帰ることも
何度か有ったから、そんな時寄ってみたいなぁ~
煮物やお漬物が魅力(笑)

おはようございます

このお店は全然知りませんでした。
多分車で前を走っても見落としてしまうんでしょうねえ。

とても美味しそうですね。
こういうのを田舎蕎麦っていうんですねえ。
煮込みそばご飯付きあたりをぜひ頂いてみたいと思います。

お店ごと

ファットマン様
このお店は、おばちゃんが商売っ気抜きで、柳谷時代に日常的に打っていた蕎麦を出しておられます。

我々が一般的に言う「田舎蕎麦」ではなく、文字通りの「田舎蕎麦」です。
但し、田舎では蕎麦の実を石臼で挽く時、そば殻毎そのまま挽きますので、結果的にイワユル「田舎蕎麦」の定義どおりの蕎麦が出来上がるというわけです。本人達は意識して「田舎蕎麦」を打っているとは思っていないはずです。

ですから、蕎麦をいただくというより、おばちゃんごと、お店ごといただくという味わい方になりますね。

まあ、煮物だって丁寧に作ってあります。決して喉を唸らせるような味ではありませんが、田舎に包み込まれたような気分で味わえると思います。

大抵の方が

ベル様
大抵の方が、先ずは見過ごしてしまうお店ですね。
ワタシも、このシリーズを書いていなかったら目に入らなかったかも知れません。

お店の外観だけでは、どういうお店か分からないからです。

でも、おばちゃんが、家でじっとしているよりはいい、と、そういう思いで蕎麦を自分で打って出しておられます。うどん麺は仕入れです。

味は、「おおおおおこれは旨い!」という味では決してありません。ですからわざわざ行くお店ではないと思いますが、偶然他のお店が閉まっていた時など、フラッと立ち寄るのはいいと思います。

望郷の一品

じゅんさん、こんにちは。

素朴なお蕎麦ですね。
いかにもじゅんさんが好きそうな料理、好きそうなお店、好きそうな女将さんじゃないですか♪

こういうこじんまりとしたお店は得てして入りにくい面がありますが、入るといろいろ発見もできるのでしょうね。隠れ名店発見はとても楽しいと思いますので、私もいろいろ冒険しなきゃ!ですねwww



素朴を絵に描いた

乱駆郎様
まさに、「素朴」がスノコの上に乗っかって出てきたという「蕎麦」でした。
田舎つながりはいいもんですよ!

味は、特別美味しいわけではないけど、「お店=人」と考えると、ワタシにとっては、仰るように隠れ名店ですね。

こういう対話が成立ってくれさえすれば、ワタシにとって、記事はお店を出たときに80%完成しています。

ワタシは1時間~2時間位の会話なら、9割以上はその会話通りに再現する自信はありますので。もちろんメモなど取らずに。

こういう「人知れず」、というお店をコツコツ歩くのは楽しいですね。
プロフィール

じゅん

Author:じゅん
愛媛の松山から、「愛媛グルメ紀行」や「愛媛の歴史」など、幅広いテーマで情報発信しています。日曜日を除く毎日更新。画像も豊富。
長いサラリーマン生活に終止符を打ち、還暦をとうに過ぎた2014.12.1に起業して社長になりました。

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