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「キッチン スプーン」・「愛媛グルメ紀行」 514

今日は、上浮穴郡久万高原町の直瀬(なおせ)にある洋食レストラン”キッチン スプーン”さんをご紹介しましょう。

このお店は久万高原町に在住され、ご主人は木工師、奥様は漆師という”兒玉ご夫妻”様に紹介されました。

このお話は、このお店をお訪ねした日よりおおよそ10日前から既に静かな幕が開いていました。

それは一本の電話から始まりました。

田植え準備1
久万高原町”の田植えは、松山地域に比べたら随分早く、5月中旬には始まります。

ワタシがこのお店をお訪ねしたのは4月20日のこと。既に田には水が張られ、”田植え”の準備が始まっていました。

久万高原町の四季は冬が長く、生物(いきもの)が活動し生長できる季節は松山平野部の村々に比べて極めて短いのです。

その生きとし生けるものは、限られた短い時間に精一杯”生の営み”を凝縮させます。束の間の季節に、実に濃い時間を過ごさなければならないのです。


このお店をお訪ねした10日程前、お店にお電話しました。兒玉ご夫妻から予約しておいたほうがいいと、アドバイスを受けていたからです。

「モシモシ・・・・久万高原町にお住まいの兒玉ご夫妻から紹介されましたHと申します。今度の土曜日の午前11時30分で予約が取れますでしょうか?」、それがワタシの第一声。

「ああ、兒玉ご夫妻の・・・・親しくさせて頂いております。せっかくお電話いただいたのですが、生憎今週の土曜日は予約で埋まっております。大変申し訳ございません」っと、若い女性の店主さんのお優しいお声。

案内板2
このお店は、久万高原町の中心部から更に四国山地の奥に分け入った、山間部田園地帯にあります。

そこで、女性が一人で”洋食”のお店をやっておられます。その店主さんの健気(けなげ)に爽(さわ)やかで、なおかつ見事な仕事ぶりを是非にも見ていただきたいというのが兒玉ご夫妻の言葉でした。

「来週早々にも、改めましてお電話差し上げます」っとワタシ。「ぜひお待ち申し上げております」というのが女性店主さん。翌週土曜日20日の予約がとれました。

それから当日です。「国道33号線から左折し直瀬方面に向かい、井部美術館を過ぎたら改めてお電話下さい」と、店主さん。そのポイントでお店にお電話しました。

すると、実に的確に要件をお答えになり、その指示に従って5枚の案内看板通りに車を進めますと、お店に真っ直ぐ到着することが出来ました。

実に知性的、かつ心の奥深いところで心が和(なご)む電話でのご案内でした。まだお店に到着していないその時点で、このお店の魅力の8割がたが味わえた・・・・そのような、極めて印象的な電話での会話でした。

お店3
こちらがお店です。お住まいはすぐお近くにあります。

お店の右手にある白い玄関ドアの左手に、小さな白い木枠で囲まれた窓が見えます。この””のことを、ちょっとだけ記憶にとどめておいて下さい。

なんとまあ、こういう高原の田園が広まる高台にお店を出されたその”感性”。

お店に入る前から既にその”感性”にすっかり魅了されていました。何時も冷静にお店の隅々まで観察の目を光らせるワタシとは、まるで別人のワタシがお店の玄関をくぐりました。

すると想像通り、妙齢の女性店主さんに迎え入れられました。店内は9人も入れば満席になるほどの小ぶりなお店です。でも、お店の隅々まで磨き上げられていました。それは、お料理以前にお見事と言う他ないお店作りでした。

店内にはまだ”薪ストーブ”の中の薪が赤々と燃えていました。ここ直瀬では、既にソメイヨシノも山桜も終わっていましたが、八重桜だけはまだその可憐な姿が残っていました。

直瀬の季節の移ろいは、単純ではありません。二つの季節が間断なく続き、複層的に変わっていきます。

店内4
店内の窓からは、高原の春が手に取るように間近に感じることが出来ます。

八重桜が残っている下の土手には、まだ”菜の花”も咲き乱れています。その一方で、その土手の田には満々とした水が既に張られて、田植えを待つばかりになっています。

季節の移ろいを、このお店の中から静かに落ち着いた気持ちで実感できる。

このお店に入って席に付いた瞬間から、このお店は”お料理”と共に、大自然と四季をそのまま味わうお店であり、静かにユッタリと過ぎ行く時間を味わうお店であり、更に店主さんの慈愛に満ちた優しい空間を共有するお店であることに気がつきます

メニュー5
メニューは、厨房の上のボード一杯に女性らしい細やかな字で書かれています。

”チキンカツのボリュームサラダランチ”1050円などのランチメニューもあります。

ですが、今回はこの何とも心温まる、そして心和む時間を自然に囲まれながらタップリ楽しもうと”kitchen spoon シンプルコース”と名づけられたメニューを選びました。2500円(内税)です。

このお値段は、お料理に対するものに加えて”至福の空間と時間”という付加価値付きのお値段です。

メニューを店主さんに告げますと「お嫌いな食べ物、苦手なメニューや調理法などございますか?」っと自然な笑顔で尋ねられました。

「刺身以外は何でもいただけます。ただし見かけによらず小食なので、量は少なめでお願いします」とだけ告げました。ところがこのことが最後の最後になって、この店主さんの”心遣いの深さ”と”思いがけない展開”を見せていただくことにつながりました。

直瀬の山菜サラダ6
お茶とお絞りが出された後に、先ず最初に供せられるのが”直瀬の山菜サラダ”と名づけられた一品です。

手前に緑色をしたゼンマイに似た山菜が見えます。これは”クサソテツ”の幼葉で”コゴミ”と言います。店主さんに教えていただきました。ゼンマイにはアクがあありますが、この”コゴミ”にはそれがないので生でいただけます。

その他に独活(ウド)、タラの芽の天婦羅、緑の葉に赤い茎をもつ目にも鮮やかな”フダンソウ”、タケノコ、クレソン、ワラビ、その他数種類の葉物野菜が形よく木の器で供せられました。

これはもう”直瀬の野山”を丸ごと、そのままいただこうという趣向です。地元”直瀬”にとことん拘(こだわ)ったお料理です。

このサラダ以外の全部のメニューに直瀬で採れたものが使われていて、店主さんの”直瀬”という所への溢れんばかりの愛情を感じ取れます。

「春の山菜には苦味があります。野草が持っている”苦味”は、冬の間活動が落ちていた体を目覚めさせる為だと聞いております。長い冬眠から目覚めた熊が、真っ先に食べるのが”蕗の薹”(フキノトウ)だそうです」っと、慈愛に満ちた笑顔で、囁くように語り掛けられます。

その声を聞いた瞬間、苦味のある山菜が甘露のような甘さに変わるのが・・・・不思議です。

春野菜と山菜のクリームシチューパイ7
次に出されたのが””春野菜と山菜のクリームシチューパイ”と名づけられたメニューです。

「パイ生地は、地粉(じごな=地元直瀬産の小麦粉)を三種ブレンドしてバターと塩で練りこんで作っております。クリームシチューが入っている容器が熱うございますから、お気をつけになってください」っと、これまた天使のような自然な笑顔で説明していただきました。

パイ生地で、熱々のクリームシチューの熱を封じ込めてあります。そのパイ生地内部の熱で、パイ生地の香ばしさが際立つ仕掛けです。

パイ生地の上には、菜の花の一輪挿し。まあ、なんと細やかな表現なのでしょう。

春野菜と山菜のクリームシチューパイ8
パイ生地の中は、トロトロアツアツのクリームシチューです。そして、その中味は春の直瀬の山菜で満ち満ちていました。山菜だけではありません、数種類の豆類も入っていて、様々な味と食感が楽しめます。

山菜を生で丸ごといただき、今度はシチューの具材としていただく。調理の仕方の違いによって、山菜を多様に味わい尽くす。贅沢です。確かにキャビアだイクラだキングサーモンだと言えば、それはそれで美味しいし贅沢でしょう。

でも、日本人はこういう贅沢の仕方も知っている。それが、シェフでもある店主さんの提案でしょう。

大阪の料理学校で学ばれ、調理士免許を取得され、神戸や松山で飲食に携われワインバーなども経営されていた店主さんの”豊富な経験”。

そして自然を取り込む素晴らしい”感性”、それと”直瀬の採り立ての食材と自然”をたっぷり味わっていただきたいという”おもてなしの心”あってのお料理の数々です。

自家製パン9
こちらも地粉をブレンドして自ら生地を練り、寝かして、そして焼いた”自家製パン”です。

パンが香ばしく香っています。小麦粉の旨味をパリパリに焼かれた皮で封じ込めてあります。

手前には、パイ生地などに練りこむ”無塩バター”が一片添えられています。無塩バターだと、乳製品独特の味をそのままに味わえます。でも、チョットした心遣いで、美味しくいただく為のアラ塩が無塩バターの上に落とされています。

味のバランスへの深い配慮に驚かされます。口腔内で、香ばしいパンとバターが絶妙に溶け合ってくれます。

手打ちパスタ10
こちらが”地粉の手打ちパスタ、ふきと根菜、雑穀のラグーソース”と名づけられた一品。手打ちの生パスタが使われています。

ワタシは500店を越えるお店にお伺いしていて、イタリアンのお店も数多く行っていますが”生パスタ"をいただくのは初めてです。

ラグーソース”というのは、具材を細かく刻んで煮込んだソースのことです。ボロネーゼ(ミートソース)がその代表ですね。

このパスタの場合、ふきや根菜や雑穀をコトコト煮込んでソースにされました。

「この量で大丈夫ですか?」っと店主さん。その細やかで優しいお心遣いにトコトン癒されます。同じ空間を共有できることのありがたみが身に染みます。

「ええ、ちょうどいい量です。この雑穀類をお使いになったのは?」っとワタシ。

「はい、雑穀類は煮込みますと水分を含んでくれて量(かさ)が増えます。これだと、少量の材料でお腹一杯になります」っと、いかにも女性らしい配慮。

「このパスタの上に振りかかっているチーズのようなものは?」っとワタシ。

「ええ、それはオカラです。香り付けに少しのチーズを加えております」っと。え???”オカラ”・・

あくまでも地元の食材に拘る一方、カロリーバランスにも細心の注意を計られていることがよく分かります。

工夫と調理法一つで、大豆から作った豆腐の搾りかすがここまで活かされます。唸る他ないでしょう。

生パスタのモッチリ感を食感として味わいながら、根菜や雑穀の”土の香り”(と象徴的に表現していいと思う)を感じる深い味わい、フキのホノかな香りを楽しめました。初めて味わうお味でした。

デザートと紅茶11
さて、いよいよコースの最後を締めくくる飲み物とデザートです。

「コーヒーと紅茶がご用意できますが」っと店主さん。ワタシの横で跪(ひざまず)くように希望をお尋ねになりましたので紅茶をお願いしました。

そして、この後でした。冒頭で、「量は少なめで」と言ったが為に思いがけない展開になったと書いた内容です。

「Hさん、実はこのコースでご用意しているのは”スコーン”二枚です。でもHさんの””のことを考えますと、ここは”ジェラート”にお代えしましょうか?」っと店主さん。

パスタの量で調整しただいた上に、デザートの中味までお気を使われた。ここが”思いがけない展開”と書いた中味です。””だけを意識すれば通常のデザート”で用意された”スコーン”を半分に減らせば済むことです。普通のお店ならそうしたでしょう。

ところがこの店主さん、胃の負担が更に軽くなるように”デザート”の種類でも調整されようと・・・・・・もう、その体の毛細血管の隅々まで行き届く心遣いの細やかさには、言葉が出てきませんでした。

タダタダ「・・・・・・」と頷(うなづ)いただけです。

またさり気無く出された”紅茶”、これはおいしい水と空気に恵まれた久万高原町のてっぺん育ちの紅茶、”天辺の紅茶”を使われています。

久万美術館の所蔵品と松山のデザイン学校の初コラボによるパッケージも話題の”紅茶”を黙って出された。しかも、ワタシに「ミルクにしますか?レモンにしますか?」などという野暮なことは聞かず、更に砂糖も沿えずに黙って出された。

「久万高原町で育った美味しい紅茶を、そのまま召し上がって!」っという無言のメッセージでしょう。しかと、受け止めました。

スコーン12
そして「せっかくですから”スコーン”も半分だけ召し上がってみて下さい」っと、つい誘い込まれるような自然な微笑み。

敢えて例えるなら、”レオナルド・ダ・ヴィンチ”の最高傑作の一つである”モナ・リザ”を彷彿とさせる”笑顔”です。

決して大げさに書いているのではありません。思ったままを書いております。

なお”スコーン”とは、スコットランドが発祥の、アメリカでは”ビスケット”と呼ばれる焼き菓子の一種。

イギリスの家庭で”お茶”と言えば、紅茶とスコーンが付き物です。

その香ばしい”スコーン”も、一枚一枚ご自分で粉を練り牛乳でまとめられて焼きげられた。

その優しいお心遣いを、贅沢に香ばしくいただいた。

豆乳ジェラート13
さて、これがお話を締めくくる”デザート”で、スコーンに代えられて出された”ジェラート”。

この”ジェラート”で驚き感動したのは、”豆乳”で作られているということ。余り乳脂肪分を取り過ぎないように、そして”直瀬”で採れた”大豆”にとことん拘り抜かれた。

そして、この豆乳で作られた”ジェラート”です。”スプーン”で一口、口に含んだだけで直立不動になって思わず立ち上がる程の美味しさ。

大豆”は、植物の中では唯一肉に匹敵するだけのタンパク質を含有する”大地の黄金”と呼ばれている健康食品です。

その大豆が、甘いジェラートに生まれ変わった、ジェラートの上には、イチゴの食感と形を残したジャムが一粒乗せられている。見事な色彩感覚と、素材への探究心。恐れ入りましたとしか表現のしようがありません。

この”ランチ”に費やした時間は1時間と30分。今までのランチでは圧倒的な時間の長さ。でもその長い時間も、実感的にはあっという間の夢に中の出来事の様にお話が進行していった。お話はここで終わった・・・・と思った。でも終わってはいなかった。

お勘定を済ませて、美味しいお料理の数々と細やかな心遣いにお礼を言って、お店を出て車で走り去ろうとしたその瞬間でした!

何と、店主さんがレストランの白い木枠で囲まれた可愛い””を一杯に開けて大きく身を乗り出し「Hさーん、ありがとうございましたー!」と、あの”モナ・リザ”を更に一段美しくしたかのような笑顔で大きく手を振られているではありませんか。

思わず息を呑みました。店内には他のお客様がいらっしゃって、厨房では火を使われていました。

この店主さん、恐らく他にお客様がいないときはお店の外に出て帰られるお客様のお見送りをされるのでしょう。

でもそれが適わぬ状況下にあっても尚且つ、””から身を乗り出されて笑顔で大きく手を振っていただいた。

一本の電話でつながったお話が、やっとことで”小休止”となったようです。

このお話は、多分これからも続くことでしょう。

兒玉ご夫妻”様、いいお店をご紹介いただき本当にありがとうございました。




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おはようございます

こういうお店でゆっくりと過ごす心の余裕を持ちたいものですよね。なかなか現実にはそうもいきませんけど。

食べログ等によれば、オーナーさんはフランス留学や神戸の有名店での修行経験もおありとのことで単なる自然食材回帰のお店とも一線を画しておられるようにも思われ、なおさら期待が高まります。
ブログ等も積極的にやっておられるようですよ。

www.kitchen-spoon.com/blog/

まいろです!

まるで外国映画のワンシーンをみているような、、
そんな気持ちになりました。
毎度素晴らしい文章で驚かされます。(^-^)/

貴重な情報を

ファットマン様
何時も貴重な情報をありがとうございます。ワタシは、自分のブログを書くことと、知っている方のブログを読んでたまにコメントすることで精一杯で、それ以外の情報はほとんど知りません。

そうでしたか、このお店の店主さんもブログを書かれていたんですね。早速アクセスしてみましょう。貴重な情報、何時もありがとうございます。

このお店は水、木、金、土の週4日しか営業されていないので、ワタシの様に時間が自由になるものでないと、ユックリ時間を楽しむことは難しいかも知れませんね。でも、でも素敵なお店ですよ。

ありがとうございます

おーちゃん様
お褒めをいただいて、ありがとうございます。

私もあの日は、一種の夢うつつで、何が何だか分からないままの1時間30分でした。

そして、ブログ記事を書こうとパソコンの前に立ちますと、自然に指が動いて、気が付いたら原稿が完成していました。

自分で書いたのではないかも知れません。不思議な体験をしました。
プロフィール

じゅん

Author:じゅん
愛媛の松山から、「愛媛グルメ紀行」や「愛媛の歴史」など、幅広いテーマで情報発信しています。日曜日を除く毎日更新。画像も豊富。
長いサラリーマン生活に終止符を打ち、還暦をとうに過ぎた2014.12.1に起業して社長になりました。

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